トピックス 記事番号:4617080876

オーストリッチ(ダチョウ)に関する関係法規

「ダチョウは家畜なのか?」という疑問が生じる。これは、生産者側と行政機関側とダチョウに関して認識の違いから生じる問題である。「家畜」には、一般的概念と法律上の解釈とがある。また、法律にもいろいろあって、どの法律による問題なのかを明確にしないと解決されない。家畜であるかの一般的概念は、野生動物を飼いならすものではないことを前提に、飼養する者が家畜としての認識で管理し利用するものであれば、その対象動物は家畜となる。法律上では、個々の法律によって対象として明示されている家畜とそうでない家畜とに分けられる。

1 家畜伝染病予防法

「家畜伝染病予防法」とは、家畜の伝染性疾病(寄生虫病をふくむ。)の発生、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とされ、国内における家畜衛生対策にあわせて、海外からの家畜の伝染性疾病の侵入を阻止する役割をしている法律である。従って、この法律には国内に向けての法規と海外から輸入する際の法規とがある。いずれも、対象となる病気と畜種とが定義されている。                             
オーストリッチ(ダチョウ)は、平成20年12月20日付けの家畜伝染病予防法施行令の一部改正により高病原性鳥インフルエンザに対する家畜として指定され、またこれに併せて高病原性鳥インフルエンザの防疫対策の強化について一部改正され、飼養羽数が10羽以上の農場は強化モニタリング及び報告徴求の対象とされた。つまり、オーストリッチを10羽以上飼養している農場は、飼養する生体に死亡または異常が生じた場合、地元の防疫監視当局(家畜保健衛生所等)へ報告することが義務付けられている。           
海外から輸入する際の法規では、輸入検疫指定の対象となっているため、種卵、生体、生産物は規定の輸入条件と検疫が義務付けられている。

2 家畜排泄物処理法

「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」という。この法律は、畜産業を営む者による家畜排せつ物の管理に関し必要な事項を定めるとともに、家畜排せつ物の処理の高度化を図るための施設の整備を計画的に促進する措置を講ずることにより、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進を図り、もって畜産業の健全な発展に資する目的とされ、この法律に定義される「家畜排せつ物」とは、牛、豚、鶏その他政令で定める家畜の排せつ物をいうとなっており、現在のところダチョウはその対象とされていない。

3 飼料安全法

この法律は、「飼料及び飼料添加物の製造等に関する規制、飼料の公定規格の設定及びこれによる検定等を行うことにより、飼料の安全性の確保及び品質の改善を図り、もって公共の安全の確保と畜産物等の生産の安定に寄与する」ことを目的としているもので、家畜及び飼料、飼料添加物、製造業者(他に輸入業者、販売業者)等が定義されている。つまり、この法律において定義されている家畜に対して製造されたものは、対象とされる家畜のみに給与する飼料として安全性が担保されるよう規制されている。この法律で定義されている家畜は、牛、豚、めん羊、山羊及びしか、鶏及びうずら等であり、他にもみつばち、ぶり、まだい、ぎんざけ、こい、うなぎ、にじます及びあゆ等が対象となっている。ダチョウは、この法律の家畜には対象となっていないため、牛用や鶏用に製造され販売されている飼料をダチョウに給与することは違法ではないが、ダチョウにとって適正な栄養価であるか否か、或いは安全性に支障はないか等については管理者責任によると解釈される。

4 食品衛生法

ダチョウをと畜解体処理する、加工する、販売するというときに関係する法律。食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的としている。
同法には、営業する業種別に営業施設基準が規定されており、所管の都道府県の条例で決められており、営業をしようとする者は都道府県知事の許可を必要とする。ダチョウをと畜解体処理する場合には「食肉処理業」となり、肉をハムやソーセージなどに加工する場合には「食肉製品製造業」、処理された肉をパッケージして販売する場合には「食肉販売業」となる。因みに「食肉処理業」とは、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(食鳥検査法といい、鶏、七面鳥、アヒル等が対象)に規定する食鳥以外の鳥若しくはと畜場法(と場法ともいい、牛、馬、豚、めん羊、山羊等が対象)に規定する獣畜以外の獣畜をと殺し、若しくは解体し、又は解体された鳥獣の肉、内臓等を分割し、若しくは細切する営業をいう。

5 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律

環境省の所管にあって、国際法であるワシントン条約に基づき設けられている法律。この法律は、野生動植物が、生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然環境の重要な一部として人類の豊かな生活に欠かすことのできないものであることに鑑み、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることにより良好な自然環境を保全し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することが目的とされている。ダチョウは、ワシントン条約によりこの対象動物と規定されているため、海外から輸入される場合には、同条約に違反することなく輸入されたものであるという手続きが必要とされている。また、国内において贈与や譲渡等の所有権利を他者に移す場合にも規定された手続きが必要とされる。そのために対象となる個体を登録する制度が設けられている。
同法において「絶滅のおそれ」とは、野生動植物の種について、種の存続に支障を来す程度にその種の個体の数が著しく少ないこと、その種の個体の主要な生息地または生育地が消滅しつつあること、その種の個体の生息又は成育の環境が著しく悪化しつつあることなどが定義されており、一方で、野生動植物の種が置かれている状況を常に把握するとともに、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存のための総合的な施策を策定し、及び実施することが国の責務事項となっている。ダチョウは、既に「家畜伝染病予防法」に基づく輸入検疫指定動物としての対象となっているため、輸入する場合においては、同法に重複する書類の添付及びそれ以上の規制が付されており、国内においては畜産動物として繁殖、育成され、その生産物も生活資源として利用されていることから、環境省では同法の対象動物から除外するため平成19年8月10日から9月8日までの間、パブリックコメントを実施し、同法施行規則の一部を改正する省令(案)の2により「現在、我が国で商業的繁殖が一般的に行われ、野生個体又はワシントン条約の規制対象個体群の個体が国内でほとんど取引きされていないダチョウ(ストリティオ・カメルス)を譲渡し等の規制対象から除外する」という方針としている。

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